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- 整備士の離職率はどの程度か|公的データで見る現状
- 産業分類から見た整備業の離職率
- 新規学卒者の3年以内離職率
- 整備要員数と平均年齢の推移
- 有効求人倍率から見る人材の逼迫
- 整備士が辞める理由
- 工具代などの自己負担で手取りが目減りする
- 給与や賞与の水準に納得できない
- 休日が少なく繁忙期の負担が大きい
- 体力面の負担と作業環境の厳しさ
- 人間関係と指導体制のばらつき
- 評価やキャリアの見通しが分かりにくい
- 整備士の離職が事業に与える影響
- 入庫対応力の低下と納期の遅れ
- 採用費と教育費の再発生
- 残った整備士への負荷の集中
- 技術やノウハウの継承が途切れる
- 整備士の定着率を高めるための対策
- 給与体系と評価制度を見直す
- 工具代など業務に必要な費用を会社負担にする
- 休日と労働時間を設計し直す
- 設備投資で作業環境を整える
- 資格取得とスキル習得を支援する
- 相談しやすい職場をつくる
- 入社後のミスマッチを減らす採用の進め方
- 求人票で伝えておきたい情報
- 選考時の職場見学と体験の機会
- 入社後のフォロー体制の整備
- 未経験者と有資格者で受け入れ方を変える
- 整備士本人が離職を考えたときの選択肢
- 業界内で職場を変える
- 整備の経験を活かせる職種へ移る
- 資格取得でキャリアの幅を広げる
- 辞める前に確認しておきたいこと
- 整備士の離職率に関するよくある質問
- 整備士の離職率は他の業界と比べて高いのですか
- 整備士の離職率が高いのは若手が多いからですか
- そもそも人手不足の状況で採用を続けるべきなのでしょうか
- 定着のために最初に取り組むべきことは何ですか
- 一度辞めた整備士が復職することはありますか
- まとめ|整備士不足の時代は「採用」より「定着」の重要性が高まる
「せっかく採用した整備士が、数年で辞めてしまう」「整備士は離職率が高いと聞くが、実際のところはどうなのか」
こうした悩みを抱える整備工場やディーラーの経営者、採用担当者は少なくないでしょう。
自動車整備士だけを取り出した離職率は公表されていませんが、関連する公的統計を組み合わせれば、人材の流動や需給の状況を数字で把握できます。
本記事では、公的データから見た離職率の実態、整備士が辞める理由、事業への影響、定着に向けた対策と採用の進め方を解説します。
整備士として働いた経験がある101名への独自調査の結果も紹介するので、自社の定着施策を検討する際の参考にしてください。
整備士の離職率はどの程度か|公的データで見る現状
整備士の離職率が高いという話は、自動車業界では長く語られてきました。
ただし「自動車整備士」だけを取り出した離職率を国は公表しておらず、複数の統計を組み合わせて読み解く必要があります。

まず、整備士自身が離職をどの程度意識しているのかを確認しました。
モビリア総合研究所が整備士として働いた経験がある101名に尋ねたところ、離職や転職を考えたことがある人は96人で、全体の95.0%にのぼりました。
内訳は、実際に離職・転職した人が41.6%、強く考えたことがあるが続けている(続けていた)人が39.6%、少し考えたことがある人が14人です。
考えたことはないと答えた人は5.0%にとどまりました。
離職を考えた経験そのものは、回答者の大半に共通していました。
ただし、実際に離職した人と続けた人の差を生む要因までは、本調査では特定できません。
確認していくポイントは、次のとおりです。
- 産業分類から見た整備業の離職率
- 新規学卒者の3年以内離職率
- 整備要員数と平均年齢の推移
- 有効求人倍率から見る人材の逼迫
それぞれ見ていきましょう。
産業分類から見た整備業の離職率
厚生労働省の雇用動向調査に、自動車整備士単独の離職率はありません。
自動車整備業は日本標準産業分類の大分類「サービス業(他に分類されないもの)」に含まれるため、この区分の数値で傾向を見ることになります。
令和6年の調査では、同区分の一般労働者の離職率は19.0%で、産業別では最も高い水準でした。
一方で入職率は19.4%あり、離職率をわずかに上回っています。
数字が高いのは事実ですが、この区分には整備業以外の業種も多く含まれる点に留意が必要です。
反対に、整備と販売をあわせて行う事業所は卸売業・小売業に分類される場合もあります。
整備士だけの離職率と読み替えることはできない点に注意が必要です。
新規学卒者の3年以内離職率
若手の定着を見るなら、新規学卒就職者の離職状況が参考になります。
令和4年3月に卒業した人の就職後3年以内の離職率は、高校卒が37.9%、大学卒が33.8%でした。
事業所規模別に見ると、高校卒・大学卒ともに規模が小さい事業所ほど離職率が高くなっています。
自動車整備業も1事業場あたりの整備要員が4.36人と、小規模な事業場が中心です。
ただし厚生労働省の規模区分は事業所の全従業員数によるもので、整備要員数とは指標が異なります。
この2つの統計だけで整備士の若手の定着率を判断することはできません。
整備要員数と平均年齢の推移
日本自動車整備振興会連合会の令和7年度自動車特定整備業実態調査によると、整備要員数は402,367人で、4年連続の増加でした。
整備士数も333,475人と前年度より増えています。
人数だけを見れば、整備士が減り続けているわけではありません。
人数が保たれている一方で、課題として表れているのは年齢構成の偏りです。
整備要員の平均年齢(自家を除く)は47.7歳で、前年度より0.3歳上昇しました。
令和2年度は45.7歳でしたから、5年で2.0歳上がった計算になります。
人数と年齢がどう動いてきたのか、直近6年間の推移を下表にまとめました。
| 調査年度 | 整備要員数 | 整備要員平均年齢 |
|---|---|---|
| 令和2年度 | 399,218人 | 45.7歳 |
| 令和3年度 | 398,952人 | 46.4歳 |
| 令和4年度 | 399,619人 | 46.7歳 |
| 令和5年度 | 399,770人 | 47.2歳 |
| 令和6年度 | 402,025人 | 47.4歳 |
| 令和7年度 | 402,367人 | 47.7歳 |
※平均年齢は自家を除く数値です。
人数がほぼ横ばいで推移する一方、平均年齢だけが毎年上がり続けていることが分かります。
業態による差も大きく、専業・兼業が52.1歳であるのに対し、ディーラーは37.9歳です。
業態によって年齢構成に大きな差があることが分かります。
参考:令和7年度自動車特定整備業実態調査結果の概要(日本自動車整備振興会連合会)
有効求人倍率から見る人材の逼迫
国土交通省の資料によると、自動車整備要員の有効求人倍率は令和5年度で4.99倍でした。
同年度の全職種平均は1.17倍ですから、4倍以上の開きがあります。
事業者側の実感も、この数字と同じ方向を向いているようです。
同資料では、約6割の事業者が整備士の不足を感じていると報告されています。
人材を送り出す側の先細りも、歯止めがかからない状況です。
自動車整備学校の入学者数は、平成15年度の12,394人から令和6年度には7,068人へと、約43%減少しました。
採用だけで人手不足を補い続けることは難しくなっており、いま在籍している整備士に長く働いてもらう設計が現実的な打ち手になります。
参考:自動車整備士の確保・育成に係る課題とこれまでの取組(国土交通省)
整備士が辞める理由
離職の引き金は一つではなく、待遇、労働時間、身体的な負担、人間関係、将来性といった要因が重なって退職という判断に至ります。
どこから手を付けるべきかを決めるためにも、現場が何に負担を感じているかを具体的に押さえておきましょう。

同調査(複数回答可・n=101)で、働くうえで負担や不満を感じたことがある点を尋ねました。
最も多かったのは「工具代などの自己負担があり、実質的な手取りが少ない」で45.5%、次いで「給与・賞与が仕事内容に見合わない」が44.6%、「昇給のペースが遅い、または上限が見えている」が34.7%と続きます。
上位3項目は、いずれも金銭に関わる内容で占められました。
ただし1位は給与そのものではなく、自己負担の話です。
なお、この設問で尋ねたのは、働くうえで負担や不満を感じた点であり、実際に離職した理由を直接尋ねたものではありません。
では、回答が多かった順に要因を見ていきましょう。
- 工具代などの自己負担で手取りが目減りする
- 給与や賞与の水準に納得できない
- 休日が少なく繁忙期の負担が大きい
- 体力面の負担と作業環境の厳しさ
- 人間関係と指導体制のばらつき
- 評価やキャリアの見通しが分かりにくい
工具代などの自己負担で手取りが目減りする
最も多かった回答は、工具代などの自己負担によって実質的な手取りが少ないという点で、45.5%を占めました。
整備の現場では、工具を個人で揃える慣習が残っている職場があります。
基本給が同じでも、工具や消耗品を自費で負担すれば、手元に残る金額はその分減ってしまうのです。
給与明細の額面には表れないため、経営側からは見えにくい不満でもあります。
求人票の条件では比較できない部分であり、入社後に気づく落差にもなりやすい項目だといえます。
給与や賞与の水準に納得できない
給与・賞与が仕事内容に見合わないと答えた人は44.6%、昇給のペースが遅い、または上限が見えていると答えた人は34.7%でした。
実際の水準を見ると、令和7年度の整備要員平均年収(自家を除く)は442万8,900円です。
業態別では専業・兼業が401万5,200円、ディーラーが535万1,200円と開きがある状況です。
国家資格を要する専門職であり、車両の電子化で求められる知識も増え続けています。
その割に昇給の上限が早く見えることが、納得感の乏しさにつながっていると考えられます。
参考:令和7年度自動車特定整備業実態調査結果の概要(日本自動車整備振興会連合会)
参考記事:自動車整備士の給料は安い?平均年収と年収を上げる方法を解説(モビリア総合研究所)
休日が少なく繁忙期の負担が大きい
休日が少ない、土日祝日に休みにくい、有給休暇が取得しづらいと答えた人は26.7%でした。
慢性的な残業や時間外労働が多いと答えた人も21.8%います。
車検や点検の入庫が特定の時期に集まるため、整備需要には大きな波があるからです。
車検の集中する時期や連休前後は入庫が増え、その分だけ現場の負荷が跳ね上がります。
土日に稼働する職場では、家族や友人と休みが合わないという問題も重なります。
年齢を重ねて生活が変わるタイミングで、この条件が転職を考える理由になることは珍しくないでしょう。
体力面の負担と作業環境の厳しさ
暑さ・寒さ・汚れなどの作業環境を挙げた人は21.8%、肉体的な負担・疲労が大きいと答えた人は20.8%でした。
整備工場は屋外に近い環境で、空調が効きにくい構造の建物も多く見られます。
重量物を扱う作業や不自然な姿勢での作業も日常的に発生するのです。
若いうちは問題なくこなせても、体力の変化とともに負担感は増していきます。
長く続けられるかという不安が、早い段階での職種転換につながる場合もあるでしょう。
人間関係と指導体制のばらつき
人間関係や指導体制を挙げた人は16.8%でした。
整備以外の業務や1人あたりの作業量の多さは14.9%、顧客とのトラブル・クレーム対応のストレスは13.9%です。
整備の技術は、現場で先輩から教わって身につける部分が大きい職種です。
そのため、指導する側の力量や姿勢によって、新人の成長速度と職場への定着が左右されます。
教え方が属人的なままだと、配属先次第で経験の差が生まれてしまうのです。
本人の適性の問題として片付けられてしまうと、早期の離職につながりやすくなります。
評価やキャリアの見通しが分かりにくい
自身のスキルアップ・成長が見込めないと答えた人は12.9%でした。
割合としては上位ではありませんが、定着を考えるうえでは見過ごせない項目です。
資格を取得しても手当や役職に反映されない、次に何を身につければ評価されるのかが示されていない。
そうした状態が続くと、働き続ける理由が見えにくくなります。
今回の調査では、回答者の37.6%が実務経験3年以上10年未満、34.7%が1年以上3年未満でした。
実務経験1年以上10年未満の層が多く含まれており、キャリアパスを示す施策を検討する際の参考になります。
整備士の離職が事業に与える影響
整備士が一人辞めることの影響は欠員一人分では済まず、入庫対応力、コスト、残った人の負荷、技術の継承と複数の面に波及します。
対策の優先度を判断するためにも、事業への影響を具体的に把握しておきましょう。
主な影響は、次のとおりです。
- 入庫対応力の低下と納期の遅れ
- 採用費と教育費の再発生
- 残った整備士への負荷の集中
- 技術やノウハウの継承が途切れる
それぞれ見ていきましょう。
入庫対応力の低下と納期の遅れ
整備要員1人あたりの年間整備売上高(自家を除く)は、令和7年度で1,659万5,000円でした。
ただしこれは平均的な生産性を示す数値であり、1人の離職で同額の売上が失われるという意味ではありません。
現場では受け入れられる台数が減り、車検や点検の予約を受けられる枠が少なくなります。
納期が延びれば顧客の不満につながり、次回以降の入庫にも影響するでしょう。
代替要員の採用には時間がかかるため、欠員の期間がそのまま機会損失として積み上がっていくといえます。
参考:令和7年度自動車特定整備業実態調査結果の概要(日本自動車整備振興会連合会)
採用費と教育費の再発生
一人採用するために、求人媒体への掲載費や人材紹介の手数料、面接や見学対応の人件費が発生します。
採用後も、独り立ちするまでの期間は先輩が指導につくことになります。
その時間は指導側の作業時間を削る形で捻出されるため、目に見えないコストとして工場全体の生産性を下げてしまうのです。
早期離職が起きると、この投資は回収されないまま次の採用に向けて同じ費用が再び必要になります。
定着率の低さは、採用コストの回転率を上げてしまう構造です。
残った整備士への負荷の集中
欠員が出ても入庫台数がすぐに減るわけではありません。
結果として、残った整備士が不足分を吸収することになります。
今回の調査でも、慢性的な残業や時間外労働を負担に挙げた人が21.8%、整備以外の業務や1人あたりの作業量の多さを挙げた人が14.9%いました。
一人の離職が残った人の負担を押し上げ、それがさらに次の離職を呼ぶ流れは避けたいところです。
欠員が出た直後の負荷調整は、優先度の高い対応です。
技術やノウハウの継承が途切れる
整備の知識には、書面に残りにくいものが多く含まれます。
特定車種の癖、診断の手順、顧客ごとの経緯といった情報は、担当者の経験として蓄積されているものです。
ベテランが抜ければ、その情報は職場から失われてしまいます。
中堅層が薄い工場では、指導役が不在になることで若手の育成そのものが止まる可能性もあります。
整備要員の平均年齢が47.7歳まで上昇している現状では、継承の機会をいつ設けるかが経営上の課題になります。
参考:令和7年度自動車特定整備業実態調査結果の概要(日本自動車整備振興会連合会)
整備士の定着率を高めるための対策
定着施策を考えるうえでは、現場から要望の多かった項目が手がかりになります。
ここでは、整備士自身が勤務先に最も改善してほしいと答えた内容をもとに、回答の多かった順に整理します。

同調査(n=101)で、整備士として長く働き続けるために勤務先に最も改善してほしいことを、一つだけ選んでもらいました。
最も多かったのは「給与や賞与の引き上げ」で36.6%、次いで「業務に必要な費用の会社負担」と「休日の増加・労働時間の短縮」がいずれも16.8%で並びました。
以下は「設備や作業環境の改善」が7.9%、「評価制度やキャリアパスの明確化」が6.9%、「資格取得や研修などの支援」が5.9%、「増員による、1人あたりの業務量・負担の軽減」が5.0%、「職場の人間関係や、他部門との連携の改善」が4.0%と続きます。
なお国土交通省は、整備事業者向けに働きやすい・働きがいのある職場づくりのガイドラインを策定済みです。
働き方・労働条件、人間関係・コミュニケーション、人材開発、待遇の4つの観点で取り組み例が示されており、自社の施策を点検する際の枠組みとして使えます。
取り上げる対策は、次のとおりです。
- 給与体系と評価制度を見直す
- 工具代など業務に必要な費用を会社負担にする
- 休日と労働時間を設計し直す
- 設備投資で作業環境を整える
- 資格取得とスキル習得を支援する
- 相談しやすい職場をつくる
それぞれ見ていきましょう。
給与体系と評価制度を見直す
最も多い要望は給与や賞与の引き上げで、全体の3分の1を超えました。
評価制度やキャリアパスの明確化を挙げた人とあわせると、報酬の水準とその決まり方の両方に関心が向いています。
一律の賃上げが難しい場合でも、何をすれば報酬が上がるのかを明示する方法があります。
見直しの切り口は、次のとおりです。
- 資格手当|取得した資格に応じて支給する
- 役職手当|工場長や主任などの役割に応じて支給する
- 等級制度|等級ごとに求める技能と報酬を定める
- 評価基準|昇給の判断材料を本人に開示する
等級ごとに求める技能を言語化しておけば、昇給の判断も伝えやすくなります。
国交省のガイドラインでも、労務費等の適正な価格転嫁によって整備要員に支払う賃金を確保することが、実施が求められる取り組みとして挙げられています。
参考:自動車整備士の確保・育成に係る課題とこれまでの取組(国土交通省)
工具代など業務に必要な費用を会社負担にする
業務に必要な費用の会社負担は16.8%で、休日の増加・労働時間の短縮と並ぶ同率2番目の要望でした。
負担や不満の調査で最も多かった工具代の自己負担と、正面から対応する項目です。
全額を会社負担に切り替えることが難しければ、購入補助や貸与制度、入社時の初期工具の支給といった段階的な方法があります。
給与そのものを上げるより費用が読みやすく、手取りの実感に直結する施策です。
求人票に明記できるため、応募者に対して差別化しやすい条件にもなります。
休日と労働時間を設計し直す
休日の増加・労働時間の短縮も16.8%で並びました。
繁忙期の集中が読める業種である以上、年間を通じた設計で緩和できる余地があります。
考えられる方法は、次のとおりです。
- 入庫の平準化|予約枠を調整し、繁忙期の集中を抑える
- 休暇の設計|繁忙期の後にまとめて休みを取れるようにする
- シフトの柔軟化|フレックス勤務や時差出勤を取り入れる
- 有給の取得促進|取得しやすい時期を先に決めておく
国交省のガイドラインでも、フレックス勤務や時差出勤などの勤務シフトの柔軟化が取り組み例として示されています。
参考:自動車整備士の確保・育成に係る課題とこれまでの取組(国土交通省)
設備投資で作業環境を整える
設備や作業環境の改善を最も改善してほしいこととして選んだ人は7.9%でした。
要望としては中位ですが、負担や不満の調査では暑さ・寒さ・汚れなどの作業環境が21.8%を占めています。
着手しやすい範囲から始められる例は、次のとおりです。
- 空調|スポットクーラーや暖房の増設
- 機器|リフトや工具の更新
- 休憩環境|休憩スペースの整備
- 診断機器|新しい技術に対応する機器の導入
診断機器の導入は職場環境の改善と同時に、新しい技術を扱える環境づくりにもつながります。
資格取得とスキル習得を支援する
資格取得や研修などの支援を選んだ人は5.9%でした。
受験費用の補助や勉強時間の確保、社外研修への参加などが具体策になります。
取得した資格を手当や等級へ反映すれば、支援と処遇を結びつけることができます。
制度を設計する際は、あわせて検討したいところです。
参考記事:自動車整備士の資格の取り方|3級・2級・1級の手順とルートを解説(モビリア総合研究所)
相談しやすい職場をつくる
職場の人間関係や、他部門との連携の改善を最も改善してほしいこととして選んだ人は4.0%でした。
一方で、負担や不満としては人間関係や指導体制が16.8%を占めています。
最優先ではないものの、負担としては広く共有されている項目だといえるでしょう。
国交省のガイドラインでは、年齢の近い先輩が新人を支えるメンター制の導入が、実施が求められる取り組みとして挙げられています。
困りごとを相談できる相手を制度として決めておくことが、指導体制のばらつきを補う方法になります。
参考:自動車整備士の確保・育成に係る課題とこれまでの取組(国土交通省)
入社後のミスマッチを減らす採用の進め方
早期離職を減らすには、企業側が入社前に認識をそろえておくことが有効です。
採用の段階で伝える内容と、入社後の受け入れ方を整理しておきましょう。
押さえておきたい点は、次のとおりです。
- 求人票で伝えておきたい情報
- 選考時の職場見学と体験の機会
- 入社後のフォロー体制の整備
- 未経験者と有資格者で受け入れ方を変える
それぞれ見ていきましょう。
求人票で伝えておきたい情報
給与は額面だけでなく、手当の内訳まで示すと実態が伝わります。
求人票に書いておきたい項目は、次のとおりです。
- 給与|基本給と各種手当の内訳、資格手当の金額
- 工具|支給・貸与の有無、購入補助の制度
- 休日|年間休日数、土日祝の扱い、有給の取得状況
- 業務範囲|担当する車種、整備以外の業務の有無
- 繁忙期|時期と残業の見込み
今回の調査で最も多かった不満が工具代などの自己負担だったことを踏まえると、この点を先に開示しておくだけでも入社後の落差は小さくできます。
休日数、繁忙期の残業の見込み、担当する車種や作業の範囲も、具体的に書くほど応募時点での相互理解が進みます。
参考記事:整備士の採用が難しい理由|応募を増やす対策と定着のコツ(モビリア総合研究所)
選考時の職場見学と体験の機会
整備工場は、職場によって設備も雰囲気も大きく異なります。
書面だけで判断してもらうと、入社後の印象差が生まれます。見学の機会を設け、実際の作業スペースや使用している機器を見てもらうことで、認識のずれを減らせるでしょう。
国土交通省も、高校生を対象とした仕事体験事業や社会科見学の機会を提供する取り組みを進めています。
自社だけで機会を設けるのが難しい場合は、こうした公的な制度を活用する方法もあります。
参考:自動車整備士の確保・育成に係る課題とこれまでの取組(国土交通省)
入社後のフォロー体制の整備
入社直後は、技術よりも職場に慣れるかどうかで定着が左右されます。
誰に何を聞けばよいかが分からない状態が続くと、それだけで孤立してしまうのです。
指導担当を決め、定期的に面談の場を設けるだけでも状況は変わります。
整えておきたい体制は、次のとおりです。
- 指導担当|作業を教える担当者を決めておく
- 定期面談|入社後の一定期間、決まった間隔で話す場を持つ
- 相談先|指導役とは別に、困りごとを話せる相手を決めておく
相談先が業務の指導役と別にあると、人間関係の悩みも拾いやすくなります。
未経験者と有資格者で受け入れ方を変える
未経験者と有資格者では、入社後のサポート(受け入れ方)を変える必要があります。
未経験者には、「なぜこの作業をするのか」といった背景や安全面のルールから丁寧に教える必要があります。一方で有資格者には、基礎から教えるよりも「前職との手順の違い」や「自社独自の進め方」を早めに共有する方が効果的です。
そのため、スキルに関係なく全員に全く同じ研修を行うと、未経験者には難しすぎ、有資格者には退屈になってしまい、どちらの層にも合いません。
「未経験者は長めの期間で基礎習得をゴールに」「有資格者は短期間で自社ルールの理解をゴールに」というように、相手に合わせて研修の目標と期間を別々に設定することで、教える側・教わる側双方の負担を減らすことができます。
なお、今回の調査では、回答者の27.7%が「過去に整備士として働いていたが、現在は別の仕事をしている」と答えています。業界から一度離れた経験者をどう迎え入れるかという視点も、今後の採用計画に加えておきたいポイントです。
整備士本人が離職を考えたときの選択肢
ここからは働く側の視点で、「今の職場を辞める」 以外の道も含めた今後の 選択肢を整理します。
「今の会社で我慢して続けるか、それともキッパリ辞めるか」という極端な二択だけで悩んでしまうと、自分に合った良い道を見落としてしまうかもしれません。
一度立ち止まって検討したい選択肢は、主に次の3つです。
- 業界内で職場を変える
- 整備の経験を活かせる職種へ移る
- 資格取得でキャリアの幅を広げる
それぞれ見ていきましょう。
業界内で職場を変える
不満の内容が職場固有のものであれば、業界内での転職で解決する場合があります。
今回の調査では、最も長く勤務した職場の業態はディーラーが38.6%、民間整備工場が27.7%、中古車販売店が17.8%、カー用品店・車検専門店・ガソリンスタンドの併設工場が14.9%、運送会社・バス会社などの自社整備部門が1.0%でした。
同じ整備士でも、扱う車種や作業範囲、働き方は業態によって変わります。
平均年齢や平均年収にも業態差があるため、条件を比較したうえで判断する価値があります。
参考:令和7年度自動車特定整備業実態調査結果の概要(日本自動車整備振興会連合会)
参考記事:【自動車整備士の転職事情】採用しても定着しないのはなぜ?転職経験者1,249人調査で見えた本当に知りたい情報とは?(モビリア総合研究所)
整備の経験を活かせる職種へ移る
体力面が理由であれば、現場作業から離れる選択肢もあります。
整備の経験を活かせる職種の例は、次のとおりです。
- サービスフロント|顧客対応と整備現場の橋渡し
- 自動車検査員|完成検査を担当する国家資格職
- 部品・品質管理|部品の仕入れや品質の確認
- 整備機器メーカー|機器の技術営業やサポート
整備の知識は、車に関わる職種の多くで評価されます。
資格と実務経験は、社内での職種転換を申し出る際の根拠にもなります。
資格取得でキャリアの幅を広げる
2級から1級へ、あるいは自動車検査員の資格を取得することで、担当できる業務が広がります。
資格は職場を移る際にも評価の基準となるものです。
勤務先に支援制度があれば、在職中に取得しておくほうが負担は軽く済みます。
実務経験の年数が受験の要件になる資格もあるため、いつから準備できるかを先に確認しておくと計画が立てやすくなります。
参考記事:整備士になるための学校の選び方|学費・期間と学校以外のルート(モビリア総合研究所)
辞める前に確認しておきたいこと
今の不満の原因が「今の職場(会社)の環境」にあるのか、それとも「整備士という職種そのもの」にあるのかを整理しておくと、今後のキャリア選択に迷いがなくなります。
辞める前に確認しておきたい項目は、次のとおりです。
- 就業規則・手当 |資格手当や工具代の補助制度が使われていないだけではないか
- 業務範囲|担当業務の変更や部署の異動(配置転換)を希望すれば、悩みは解決しないか
- 相談の余地|上司や人事担当者に現状を相談することで、環境や待遇を改善してもらえないか
- 資格支援|在職中に活用できる、資格取得の支援制度が残っていないか
工具代の負担や休日の少なさといった不満は、会社の制度を正しく活用したり、上司へ掛け合ったりすることで解決できるケースも少なくありません。
それでも「やはり環境を変えるしかない」という結論に至ったとしても、焦る必要はありません。現在、整備業界は有効求人倍率が高く、働く側にとって転職先の「選択肢が多い(有利な)状況」です。急いで次の就職先を決めてしまわず、じっくりと複数の条件を比較・検討する時間をとることをおすすめします。
整備士の離職率に関するよくある質問
整備士の離職率は他の業界と比べて高いのですか
自動車整備士だけを取り出した離職率は公表されていません。
整備業が含まれる「サービス業(他に分類されないもの)」の一般労働者の離職率は、令和6年の雇用動向調査で19.0%と産業別で最も高い水準でした。
また、自動車整備要員の有効求人倍率は4.99倍と、全職種平均の1.17倍を大きく上回っています。
加えて、今回の調査では回答者の95.0%が離職や転職を考えた経験があると答えました。
これらのデータを総合すると、整備士の人材流動性は高く、人材の定着が業界全体の課題になっている可能性は高いと考えられます。
ただし、公的な離職率が存在しないため、他業界と厳密に比較して「整備士の離職率が高い」と断定することはできません。
整備士の離職率が高いのは若手が多いからですか
整備要員の平均年齢は47.7歳であり、整備業界は必ずしも若手中心の業界ではありません。
むしろ課題となっているのは若年層の多さではなく、高齢化の進行です。
整備要員の平均年齢は近年上昇が続いており、若手人材の確保と育成が業界全体のテーマとなっています。
一方で、一般論として新規学卒者の3年以内離職率は高く、小規模事業所ほど離職率が高い傾向があります。
自動車整備業も比較的小規模な事業所が多いため、若手の定着が課題になっている可能性はあります。
ただし、整備士に限定した年齢別離職率の統計は公表されておらず、「若手が多いから離職率が高い」とまでは断定できません。
そもそも人手不足の状況で採用を続けるべきなのでしょうか
有効求人倍率は4.99倍で、全職種平均の1.17倍を大きく上回っています。
整備学校の入学者数も、平成15年度から令和6年度にかけて約43%減少しました。
採用だけで欠員を埋め続けることは難しくなっています。
採用と並行して、在籍者の定着に資源を配分するほうが現実的です。
参考:自動車整備士の確保・育成に係る課題とこれまでの取組(国土交通省)
定着のために最初に取り組むべきことは何ですか
今回の調査で最も多かった要望は給与や賞与の引き上げでした。
ただし賃上げがすぐに難しい場合は、同率2位だった業務に必要な費用の会社負担から検討する方法があります。
工具代の自己負担は不満の最上位でもあり、費用の見通しが立てやすい施策です。
全額負担が難しければ、購入補助や貸与から始める方法もあります。
一度辞めた整備士が復職することはありますか
今回の調査では、過去に整備士として働いていたが現在は別の仕事をしていると答えた人が27.7%いました。
この層がどのような条件なら戻るかは尋ねていないため断定はできませんが、経験者が一定数、業界の外にいることは確かです。
復職を想定するなら、ブランクを前提とした研修や、短時間勤務から始められる制度を用意しておく方法があります。
在職中の資格がそのまま有効である点も、経験者にとっては戻りやすさにつながります。
まとめ|整備士不足の時代は「採用」より「定着」の重要性が高まる
自動車整備士単独の離職率は公表されていません。
しかし、整備業を含む産業区分の離職率は高水準にあり、自動車整備要員の有効求人倍率も4.99倍と高い状況です。
また、整備学校の入学者数は長期的に減少しており、今後は採用だけで人手不足を補い続けることが難しくなる可能性があります。
今回の調査では、回答者の95.0%が離職や転職を考えた経験があると回答しました。
不満として最も多かったのは工具代などの自己負担で、改善要望としては給与・賞与の引き上げ、業務に必要な費用の会社負担、休日や労働時間の見直しが上位を占めています。
こうした結果を見ると、整備士の定着に向けて最初に取り組むべきことは、待遇や働き方に関する不満の解消です。
特に工具代の補助や貸与制度、評価制度の明確化、休日・労働時間の改善は比較的着手しやすく、現場の不満にも直結しています。
これからの整備士採用は、「辞めたら補充する」という考え方だけでは十分ではありません。
今いる整備士が安心して長く働ける環境を整え、そのうえで採用活動を行うことが、人材確保の現実的な戦略といえるでしょう。
そのうえで採用を進める際は、整備士に特化した求人サイト「クラッチ求人」もご活用ください。
【調査概要】調査名:自動車整備士の離職の実態と、定着に向けて求められる取り組みに関する調査/調査主体:モビリア総合研究所(株式会社プロトリオス)/調査対象:調査回答時に自動車整備士として通算1年以上働いた経験があると回答したモニター/有効回答数:101/調査方法:インターネット調査/モニター提供元:サクリサ/調査時期:2026年9月 ※設問2は複数回答可のため、割合の合計は100%を超える。
